介護事業者様向けに、Playwright(ブラウザ自動操作)を中核としたRPA基盤を構築しました。電子カルテシステム「カイポケ」から訪問記録を自動取得し、Slackの指定チャンネルへ自動連携する仕組みを実現しています。
Dockerコンテナで完全にパッケージ化し、Google Cloud Platform(GCP)の Cloud Run 上にデプロイ。月額わずか約500円という圧倒的なコストパフォーマンスで、安定稼働を続けています。
背景と課題
介護業界では、電子カルテに記録された訪問記録を、報告書作成や情報共有のために手動で転記・集約する作業が日常的に発生しています。特に以下の課題が深刻でした。
手作業による転記ミス
利用者名、投薬情報、観察記録などの転記時に人為的なミスが発生し、正確な情報管理が困難だった。
膨大な作業時間
毎日の記録確認・転記・共有に約0.5人月相当の工数が費やされ、本来の介護業務を圧迫していた。
検索性の欠如
PDF出力ではフリーテキスト検索ができず、過去の記録から必要な情報を見つけるのに時間がかかっていた。
AI活用の基盤がない
記録データが構造化されておらず、AIによる要約や分析といった高度な活用ができなかった。
ソリューション:Playwright + Docker + GCP
当初はPDF出力を前提としていましたが、検索性とAI活用の拡張性を高めるため、取得した内容を構造化テキストへ整形して投稿する方式へ変更。利用者名、訪問日時、サービス内容、職員名、観察記録、投薬・点滴管理などをテキスト化することで、Slack上での全文検索が容易になり、必要な記録へ迅速にアクセスできる運用を確立しました。
自動化フロー
で定時実行
カイポケにアクセス
パース&フォーマット
自動連携
技術的な優位性
Playwright:次世代ブラウザ自動操作
MicrosoftがオープンソースとしてメンテナンスするPlaywrightは、従来のSeleniumと比較して圧倒的に高速かつ安定。Chromium、Firefox、WebKitの3エンジンに対応し、ヘッドレスモードでのメモリ使用量も最小限。auto-waiting機能により、DOMの読み込みタイミングを自動判定するため、明示的なsleepやwaitをほぼ記述する必要がなく、フレーク(不安定テスト)が発生しにくい設計になっています。
Docker:完全再現可能な実行環境
Playwright + Chromiumブラウザ + Node.jsランタイムをすべてDockerイメージに封じ込めることで、「開発環境では動くが本番で動かない」という問題を完全に排除。フォントやロケール設定まで含めたヘッドレスブラウザ環境を再現性100%でデプロイできます。イメージサイズもマルチステージビルドで最適化し、コールドスタートを高速化しています。
GCP Cloud Run:サーバーレス&従量課金
Cloud Runはコンテナをオンデマンドで起動し、実行時間分だけ課金される完全サーバーレスアーキテクチャ。RPAが実行されていない時間帯はインスタンスがゼロにスケールダウンするため、24時間稼働のVMと比較してコストが劇的に削減されます。Cloud Schedulerとの組み合わせで、cronのようなスケジュール実行も容易に実現。月額約500円は、従来のRPAツール(月額数万円〜十数万円)と比較して1/100以下のコストです。
構造化テキスト出力:AI活用の基盤
単純なスクリーンショットやPDFではなく、記録データを項目ごとにパースして構造化テキストへ変換。利用者名・訪問日時・サービス内容・職員名・観察記録・投薬管理などが明確に区分されたフォーマットで出力されるため、Slack上での全文検索はもちろん、SlackのAI機能による要約・質問応答・月次トレンド分析にもそのまま活用できます。
ミスゼロの実現:人間を介さないワークフロー
「取得・整形・投稿」の全工程をPlaywrightが自動実行するため、人間が介在するポイントがゼロ。手作業での転記ミス・コピー漏れ・入力間違いが構造的に発生しない仕組みです。導入以降、転記に起因するミスは0件を維持しています。
なぜPlaywrightを選んだのか
| 比較項目 | Playwright | Selenium | 商用RPAツール |
|---|---|---|---|
| 安定性 | auto-waitで高安定 | 明示wait必要 | 製品依存 |
| 速度 | CDP直接通信で高速 | WebDriver経由 | GUI操作で低速 |
| Docker対応 | 公式イメージ提供 | 設定が複雑 | 非対応が多い |
| 月額コスト | 約500円(GCP) | 約500円(GCP) | 数万円〜十数万円 |
| ライセンス | Apache 2.0 | Apache 2.0 | 商用ライセンス |
Slack AI連携による情報活用の高度化
テキスト化された記録をSlackに投稿することで、以下のAI活用が可能になりました。
日次・週次の記録要約
AIが複数記録を横断的に要約し、管理者の確認時間を短縮
自然言語での記録検索
「〇〇さんの先週の投薬記録は?」のような質問で即座に回答
月次報告書の自動生成
蓄積されたテキストデータから月次レポートのドラフトを自動作成
まとめ
「取得・整形・投稿」をPlaywrightで自動化し、Dockerコンテナ化してGCP Cloud Runにデプロイすることで、現場の負担軽減と情報活用の高度化を同時に実現しました。
月額500円で0.5人月を削減
商用RPAツールの1/100以下のコストで、同等以上の自動化を実現。ROIは導入初月から黒字化。
ミスゼロの安定運用
人間が介在しないワークフローにより、転記ミスが構造的に発生しない仕組みを確立。
AI活用への道を開く
構造化テキスト化により、SlackのAI機能を活用した要約・検索・分析が即座に可能に。